モーガン・ハウセルの『アート・オブ・スペンディングマネー』を読みました。
前作『サイコロジー・オブ・マネー』がお金の「貯め方」だったのに対して、今回はお金の「使い方」。ぼくみたいに資産はそこそこあるけど使い方がわからない人間には、ドンピシャの本でしたね。
読みながら何度も「これだ」と思ったんですよ。お金について感じていたモヤモヤが、言語化されていく感覚。今日はその話をします。
お金は「ストーリー」である
ハウセルはこう書いています。
お金は数字ではなく、ストーリーである。私たちはお金を通じて、『人生で大切なものは何か』『どうすれば幸せになれるのか』というストーリーを、自分自身に語りかけているのだ
要は、お金の使い方には「その人の価値観」が全部出るってことなんですよね。
高級車を買う人は「成功を見せたい」というストーリーを持っている。旅行にお金を使う人は「経験を大切にしたい」というストーリーを持っている。ひたすら貯め込む人は「将来の不安を消したい」というストーリーを持っている。
どれが正解とかじゃないんですよ。人それぞれバックグラウンドが違うから、お金に対する態度も違って当然。

パーソナルファイナンスでは、”ファイナンス”より”パーソナル”の側面のほうが強いんだって。だから他人のお金の使い方を批判しても意味ないんだよね
そうなんです。ぼくが倹約家で蓄財をするのは、たまたまそういう人生を歩んできたから。贅沢する人を見下す資格なんてない。逆もまた然り。
「シンプルな人生」ってなんだ?
この本で一番刺さったのが、「シンプルな人生」の定義でした。
ハウセルが引用しているドーソンという人の言葉がこれ。
理想的な人生とはシンプルな人生だ。それは、お金に使われる人生ではなく、お金を使いこなす人生である
でね、ここからが重要なんですけど、シンプルって「質素」って意味じゃないんですよ。
豪邸に住んで贅沢品に囲まれていても、それが「自分で選んだ」ものなら、シンプルな人生と言える。逆に、ミニマリストでも「周りに合わせて」「見栄で」やっているなら、それはシンプルじゃない。

でもさ、”自分で選んでいる”って言い訳にならない?金持ちが贅沢を正当化してるだけじゃん?
うん、その疑問はわかる。でもね、ポイントは「ライフスタイルの形」じゃなくて「選んでいる感覚」なんですよ。
世間の目を気にして買った高級車と、本当に車が好きで買った高級車は、同じ車でも意味が違う。前者はお金に使われている。後者はお金を使いこなしている。
どんなライフスタイルを選ぶかは、たいして重要じゃない。重要なのは、自分でそのライフスタイルを選んでいること。これがハウセルの主張です。
ぼくがサイドFIREして札幌に移住したのも、誰かに勧められたわけじゃなく、自分で選んだこと。だからシンプルな人生だと思っています。そして満足できている。
じゃあ何に使えば幸せになれるの?
「お金を使いこなす」って言われても、具体的に何に使えばいいのかわからない人も多いでしょ。ぼくもそうでした。
ここで参考になるのが、『幸せをお金で買う5つの授業』という本。ハーバードの研究者たちが「科学的に幸福度が上がるお金の使い方」をまとめています。
ポイントは3つ。
1つ目、モノより経験を買う。旅行、コンサート、特別な食事。形のあるものより経験を買ったほうが、後悔が少ない。しかも経験は時間が経つほど満足度が上がるんですよ。モノは逆で、買った瞬間がピークで、あとは下がる一方。
2つ目、時間を買う。家事代行とか、時短家電とか。お金を使って自由な時間を増やすと、幸福度が上がる。
3つ目、他人に投資する。誰かにプレゼントしたり、寄付したり。自分のためだけに使うより、他人のために使ったほうが幸福度が高いという研究結果がある。

経験を買えるチャンスを逃したことが、人生最大の後悔になるんだって。”いつか行こう”じゃなくて、今行ったほうがいいのかもね
まさにそれ。ぼくもなんとなく面倒くさがりで旅行、とくに海外旅行を先延ばしにしてきたけど、今年は意識的に経験にお金を使おうと思っています。推し活もそう。好きなものを応援することにお金を使うのは、めちゃくちゃ健全な消費なんですよ。
「足りている」と認めることの難しさ
ハウセルの言葉で、もう一つ刺さったのがこれ。
お金のことを考えないようにすることが究極の目標だったのなら、ある段階で自分がそれを達成したことを認めるべきではないだろうか。目標を達成していながらそれを認めようとしないのは、目標を達成できなかったのと同じくらい良くないことだ
これ、めちゃくちゃ耳が痛いんですよね。
ぼくはいまの金融資産だけで、計算上は20年くらい働かずに生活できる。十分じゃないですか。でもね、まだ「足りない」と感じる瞬間がある。インフレが来たら、暴落が来たら、病気になったら……。

結局、嫉妬してる時点で負けなんだよなw 他人と比べてる間は永遠に満足できないぜw
厳しいけど、その通りなんですよ。
ハウセルも書いています。「満足感を得るための唯一の方法は、”もっと”を求めるゲームから降りること」だと。
ストア哲学に「富を必要としないことは、富そのものよりも価値がある」という言葉があるそうです。お金を持っていることより、お金がなくても平気でいられることのほうが、実は価値がある。
ぼくはまだその境地には達していないけど、少なくとも「足りている」と認める練習は始めています。
お金は不安の源じゃなく、自由のための道具。
「いくら持っているか」より「どう使いこなしているか」。
自分で選んでいる感覚があるなら、それでいい。豪邸でもワンルームでも、旅行三昧でも引きこもりでも、自分で選んでいるならシンプルな人生だ。
ハウセルを読んで、改めてそう思いました。
現場からは以上です。



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