インデックス投資を始めて、資産形成の「正解」を手に入れた気がしました。
S&P500か全世界株か、という細かい議論はあるけど、大枠では「長期・分散・低コスト」で決着済み。本を2〜3冊読めば、誰でも「正解」に辿り着ける。なんて親切な世界なんだ、と思った。
でも、いざ使う段階になったら、何が正解かまったくわからない。旅行に使うべきか、美食に使うべきか、推し活に使うべきか。誰も教えてくれない。というか、教えられる人がいない。
今日は、お金の「貯め方」と「使い方」の非対称性について話します。
蓄財には「正解」がある
まず、蓄財の話から。
2024年から新NISAが始まって、投資の民主化が一気に進みました。YouTubeを開けば「eMAXIS Slim全世界株式を買え」という動画が溢れている。X(旧Twitter)でも「インデックス投資以外は情弱」みたいな空気がある。
これ、ある意味で正しい。

効率的市場仮説に基づけば、アクティブ運用がインデックスに勝ち続けるのは統計的に困難だよ。プロのファンドマネージャーでさえ、長期ではインデックスに負けることが多い。だから”正解”が存在しうるんだ
そう、蓄財の方法には「正解」がある。
低コストのインデックスファンドを買って、長期で保有する。これだけ。シンプル。再現性がある。誰がやっても同じ結果になる。知識さえあれば、迷う必要がない。
ぼくもFIREするまでの約15年間、ひたすらインデックス投資を続けてきました。給料が入ったら一定額を投資に回す。それだけ。脳死でできる。だって「正解」がわかっているから。
消費には「正解」がない
問題は消費のほう。
いざ資産ができて「さあ使おう」となったとき、何に使えばいいのかわからない。旅行?美食?推し活?高級時計?寄付?
「経験にお金を使え」という研究知見はあります。ハーバードの研究者たちが「モノより経験を買ったほうが幸福度が上がる」と言っている。
でも、「どの経験が自分を幸せにするか」は誰も教えてくれない。

でもさ、『好きなことに使えばいい』ってよく言うじゃん?それじゃダメなの?
それが簡単なら何も問題はない。
「好きなこと」がわからないから困っている人、けっこう多いと思うんですよ。ぼくもそう。蓄財は得意だった。でも消費は苦手。「これに使いたい!」という強い欲求がない。
15年間、ひたすら貯めることに集中してきたから、「使う筋肉」が退化しているのかもしれない。
マトリックスで整理してみる
ここで、お金の問題を整理してみます。
「蓄財か消費か」という軸と、「知識で解決できるか、自己理解でしか解決できないか」という軸。この2つで4象限に分けられる。
| 知識で解決 | 自己理解で解決 | |
|---|---|---|
| 蓄財 | インデックス投資 | リスク許容度 |
| 消費 | 「経験>モノ」等の研究 | 自分が何に幸せを感じるか |
蓄財は左上に集中しているんですよね。「インデックス投資が正解」という知識があれば、ほぼ解決する。リスク許容度の見極めは多少の自己理解が必要だけど、それでも「株式比率を下げればいい」という垂直方向の上げ下げだけで対処できる。
問題は消費の右下。「自分が何に幸せを感じるか」。ここには知識が通用しない。

蓄財は”勉強”で解決できるけど、消費は”内省”が必要なんだね。だから難しく感じるのかも
まさにそれ。本を読んでも解決しない領域がある。自分の内側を掘り下げないと答えが出ない。
これが「パーソナルファイナンス」の「パーソナル」の部分なんですよ。
失敗がわかるか、わからないか
もう一つの非対称性があります。
蓄財の失敗は明確です。手数料の高い投信を買った。タイミング投資で損した。詐欺商品に引っかかった。数字で結果が出るから、失敗が目に見える。
でも消費の失敗は曖昧です。
「あの旅行、行ってよかったのか?」「あのブランド品、買う必要あったのか?」永遠に答えが出ない。比較対象がないから。
蓄財は他人と比較できる。資産額、利回り、貯蓄率。数字で優劣がつく。インデックスの平均リターンという「基準」がある。
消費は比較しても意味がない。ぼくが旅行に100万円使って幸せだったとしても、あなたが同じことをして幸せになるとは限らない。

結局、蓄財は数字で勝ち負けがわかるから楽なんだよw 消費は自分の幸福度なんて測れないから、永遠に迷い続けるわけだw
厳しいけど、その通り。
蓄財には「正解」があり、失敗も明確で、他人と比較もできる。だから迷わない。
消費には「正解」がなく、失敗もわからず、比較も意味がない。だから迷い続ける。
「パーソナル」を掘り下げるしかない
じゃあどうすればいいのか。
結論から言うと、「パーソナル」を掘り下げるしかない。
自分が何に価値を感じるか。何に幸せを感じるか。これは他人に聞いても答えは出ない。本を読んでも出ない。自分で試して、内省して、少しずつ見つけていくしかない。
ぼく自身、まだ答えは出ていません。約1億円の資産があっても、「足りない」と感じる瞬間がある。これは消費の問題じゃなくて、メンタルの問題なのかもしれない。「蓄財脳」が染みついていて、使うことに罪悪感がある。
モーガン・ハウセルが「パーソナルファイナンスでは、”ファイナンス”より”パーソナル”の側面のほうが強い」と書いていました。この文章を読んだとき、はっとしました。
蓄財は「ファイナンス」の世界。知識と数字で解決できる。
消費は「パーソナル」の世界。自己理解でしか解決できない。
そして、本当に難しいのは後者なんですよ。
お金の「貯め方」の情報は溢れている。でも「使い方」は驚くほど語られない。なぜなら、使い方には「正解」がないから。
蓄財は勉強で解決できる。消費は内省でしか解決できない。
ぼくたちは「インデックス投資が正解」という知識を手に入れて、蓄財の問題を解決した気になっている。でも本当の難所は、その先にある。
パーソナルファイナンスの本丸は、ファイナンスではなくパーソナルの部分にある。自分が何に幸せを感じるか。その問いに向き合うことが、FIRE後の本当の課題なのかもしれません。
現場からは以上です。



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