ここ数日、自作のFIREシミュレーターをひたすら回しています。
最初は「ゼロで死ぬ設定」を探していて、それが思い通りにいかなくて、今度は「減らないグラフ」を探し始めて、気づいたら20回以上もシミュレーションを回していました。
でも、これだけシミュレーターを回ていると見えてくるものがあります。1回ずつバラバラに眺めていたときは気づかなかった法則が、全部を並べた瞬間にくっきり浮かび上がった。
結論から言います。FIRE後の資産推移を決めているのは、「支出」でも「リターン」でも「FIRE年齢」でもなかった。たった一つの数字でした。今日はその話を書きます。
なお、入力した数字はぼくの正確な値じゃなくて、実態に近い適当な値です。そこは前回までと同じく察してください。
気づいたら20回以上回していた
ぼくの作ったFIREシミュレーターは、年齢・資産・支出・リターンなどを入れると、100歳までの資産推移をグラフにしてくれるものです。動かせる数字がたくさんあるので、組み合わせは無限にある。
ぼくはこの数日で、リターン(9%・7%・5%)、FIRE年齢(50歳・55歳)、FIRE後の支出(月50万〜100万)、労働収入(ゼロ・年240万)を、いろんなふうに組み合わせて回しました。最初の試行錯誤も含めると、20回以上。

ゼロで死ぬ設定ひとつ探すのに20回以上って、どんだけ暇なんだよw まあ、おかげで面白い法則が見つかったんだから、結果オーライなんだけどなw
そうなんですよ。手数を打ったおかげで、法則が見えた。順番に説明します。
支出だけ、リターンだけ、を見ても答えは出ない
最初にぶつかった壁は、「どの数字が結果を決めているのか分からない」ことでした。
たとえば、同じ「月80万円使う」設定でも、結果がぜんぜん違う。労働収入がゼロなら早めに尽きるのに、年240万円稼ぐと逆に資産が増えていく。じゃあ支出は関係ないのかというと、そんなこともない。
リターンも同じで、9%という高い利回りでも、取り崩しが多ければ79歳で枯れる。5%という低い利回りでも、条件次第では資産が安定する。
つまり、支出だけ見ても、リターンだけ見ても、労働収入だけ見ても、結果は予測できない。1つの数字だけでは説明がつかないんですよね。

2つの変数を別々に眺めても傾向が見えないなら、それは2つが組み合わさった”第3の数字”が効いている可能性が高いね。バラバラの入力じゃなくて、それを束ねた合成変数を探すべきなんだよ。
その通りでした。答えは、複数の数字を組み合わせたところにあったんです。
正体は「実質取崩し額」だった
その第3の数字とは、「実質取崩し額」です。
計算はかんたん。FIRE後の年間支出から、年間の労働収入を引くだけ。これが、毎年ほんとうに資産から取り崩す金額になります。月100万使っても年240万稼げば、実質の取り崩しはその差額だけ、というわけです。
この数字で並べ直したら、バラバラだった結果がきれいな一列に並びました。証拠を一つ見せます。
| 設定 | 年間支出 | 労働収入 | 実質取崩し | 結果のグラフ |
|---|---|---|---|---|
| 完全リタイア型 | 780万 | 0 | 780万 | 大きく弧を描いて減少 |
| サイドFIRE型 | 1020万 | 240万 | 780万 | 大きく弧を描いて減少 |
見てください。年間支出は780万と1020万。240万円も違う。労働収入もゼロと240万で違う。なのに、実質取崩し額が同じ780万円だと、まったく同じグラフになる。100歳時点の資産も、どちらも約1600万円でぴったり一致する。

支出がいくらであろうと、労働収入がいくらであろうと、その差額さえ同じなら未来は同じ。これが、20回以上回して見つけた法則でした。

FIREでよく語られる4%ルールや取崩し率より、この”実質取崩し額”のほうがずっと素直に効くんだよ。月いくら出ていって、月いくら入ってくるか。その差額だけが、未来を決めている。労働収入は、支出をそっくりそのまま打ち消すんだ。
これ、当たり前のようでいて、実際にグラフがピタリと重なるのを見ると、学びが大きい。
しかも、その境界は「崖」みたいに切り立っている
実質取崩し額が結果を決めるなら、その額をいくらにすればいいのか。リターン7%で固定して、実質取崩し額だけを少しずつ変えてみました。すると、こうなった。
| 実質取崩し(年) | 100歳時点の資産 |
|---|---|
| 720万 | 約1.4億円 |
| 750万 | 約7800万円 |
| 780万 | 約1600万円 |
| 840万 | 88歳で枯渇 |
| 960万 | 80歳で枯渇 |
これ、すごくないですか。
実質取崩しが720万円なら、100歳で1.4億円も残る。それを750万円に、たった30万円増やしただけで、7800万円まで半減する。さらに30万円増やして780万円にすると、今度は1600万円。もう一段増やすと、100歳どころか88歳で底をつく。
年間で30万円。月にすれば2万5千円。それだけの違いで、人生100年時点の資産が億単位で変わる。崖みたいに切り立っているんですよね。前回「ゼロ着地はピンポイントで難しい」と書きましたが、その理由がこれ。境界がなだらかな坂じゃなくて、崖だから。

ほんの少しの差が大きく効くって、こわいけど希望でもあるよね。月に数万円の調整で、将来がガラッと変わる。逆に言えば、自分でハンドルを握れる幅が、それだけ大きいってことだから。怖がるより、味方につけたいよね。
そう、これは怖い話であると同時に、希望の話でもある。
だから、ぼくはこう使うことにした
崖がこれだけ切り立っていると、「100歳でちょうどゼロ」みたいな一点を狙うのは、現実的にはほぼ無理です。リターンは毎年ブレるし、支出だって予定通りにはいかない。崖の上で爪先立ちするようなものですから。
だからぼくは、一点を狙うのをやめました。代わりに、「実質取崩しをこのくらいに抑えておけば、まず1億は割らない」という安全圏の輪郭だけを掴んでおくことにした。ぼくの場合、リターン7%なら実質取崩しを720万円あたりに抑えておけば、生涯1億を割らずに済む。この数字だけ覚えておけば十分です。
精密な計算じゃなくて、大づかみな目安。地図でいえば、正確な座標じゃなくて「このへんが安全地帯」という輪郭。それで足りる。

結局のところ、”出ていく金から入ってくる金を引いた額”を見張ってろ、ってだけの話なんだよなw 20回以上もシミュレーション回して、たどり着いた結論がそれかよwって、まあ、手を動かさなきゃ腹落ちしなかったしなw
ほんとそれで、結論はひじょうにシンプル。でも、20回以上回して数字で殴られないと、ここまで腹落ちしなかった。
FIREの未来予測って、たくさんの数字が複雑に絡み合う難しいものだと思っている人が多いけど、実際に手を動かしてみたら、見るべきは一つだけだった。
毎年、資産から実質いくら取り崩すのか。支出から労働収入を引いた、その差額さえ見張っていれば、あとの数字はそんなに神経質にならなくていい。しかもその差額の境界は崖みたいに切り立っているから、ほんの少しの調整がしっかり効く。これはちょっとしたハンドルさばきでうまくいかなくなる怖さがある一方で、そのコントロールはそんなに難しくないという希望でもある。
現場からは以上です。
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ゼロで死ぬ設定を探して自作FIREシミュレーターを20回以上回した。結果を決めていたのは支出でもリターンでもなく、支出から労働収入を引いた「実質取崩し額」だった。しかもその境界は崖のようで、年30万円の差で100歳の資産が半減する。実データで検証した。
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