20年来の友達から「FIREしたい」とLINEが来た話(完結編)——動機づけが見えたら、人生なんとかなる

幸福論

前編・中編を書きながら、ぼくは友達への返事を組み立ててきました。

前編で「FIRE したい」を 50 歳版の year of hedonism の宣言として読み、7 つの徳目で軽くモデリング。中編で徳目の痩せは動機づけの変質のサインだと掘り下げ、50歳は動機づけの棚卸しをする時期という結論に辿り着いた。

じゃあ棚卸しが済んだとして、そこからどう動くのか。この完結編は実例と返事です。

ぼくの場合~一つの事例として

まず断っておきますが、これからぼくの話を書くのは「真似しろ」って意味じゃないんです。動機づけが変わったあと、人はこんなふうに動くこともあるよという、一例として差し出したいだけ。

20年勤めた会社員時代、ぼくは達成・前進・スキル獲得で動機づけられていた時期がありました。大学院にも行ったくらい何かを習得すること・熟達することはぼくの動機付けの中心だった。若い頃はそれで楽しく走れた。でも40 代に入ってから、その報酬関数がだんだん鈍ってきたんですよね。

2023年に退職。1 年ほど旅をした期間があって、これは結果的にすごく良かった。職場から遠く離れた場所に行き、仕事という外部刺激をオフにしたときに、自分が何を楽しいと感じるかを観察する時間になったんです。

そこで気づいたのは、ぼくは内向性が高くて、静かに本を読んだり書いたりしている時間がいちばん幸福な人間だった、ということ。前進感や支配感で動く人間ではなくて、知的な内向性が自分の動機づけの中心だった。

それが見えたので、転職のときに条件を絞りました。フルリモート、裁量労働、という贅沢な条件。地位や出世という野心は全部降ろして、「静かな環境で読書や映画を楽しみながらワークライフバランスよく働きたい」を通した。札幌に移住して、人間関係もほぼリセット。

そういう環境を見つけられたのはラッキーだった、というのは正直そうだと思う。

裁量労働制で自由、自分の強みが活きる業務で焦点、人間関係をリセットしたから仲間も選べる。サイドFIRE的な働き方が、今のぼくの幸福のかたちとしっくりきています。

ちなみに前編で伏線を張っていた「好きを仕事にするは大罪」の話。これ、誤解されがちなんですけど、好きなものに闇雲に飛びつくなって意味なんですよ。ぼくがやったのは「好き」に飛びついたというより、自分の動機づけの形状に環境を合わせにいったという感じ。そこは別物です。

優しい少年
優しい少年

自分の幸福のかたちに合う道を、ちゃんと選んだってことだよね。

道としては、これ以外にもいろいろあります。

  • 転職して条件を絞る(ぼくのパターン)
  • サイドFIRE(好きな仕事を少しだけ残す)
  • 好きなこと・情熱を注げることを仕事にする(見つかれば)
  • 個人事業主(見つからなければ、場所を自分で作る)
  • もちろん完全FIREも選択肢の一つ

どれがいいかは、棚卸しで見えた自分の動機づけ次第

人生、なんとかなる――勤勉性・誠実性の高い人なら、なおさら

ここで一番伝えたいことを書きます。

前編で触れたとおり、友人は独身一人分の資産をすでに築いている。これってビッグ5(パーソナリティ心理学の標準理論)でいう、勤勉性・誠実性(Conscientiousness)が明らかに高いことの証拠です。

ビッグ5はご存知ない人もいるかもしれないので簡単に。外向性、協調性、神経症傾向、開放性、そして勤勉性・誠実性の 5 次元で性格を記述する、心理学の主流フレームです。

で、勤勉性・誠実性は人生の成果予測に最も効くパラメータと言われています。学業・職業・収入・健康・長寿・結婚の安定性まで、広い範囲に効きます。真面目にコツコツやる、約束を守る、自己規律がある。こういう特性。

この特性をすでに持っている人が、環境を変えたところで、新しい場所で積み上げられないわけがないんですよ。実績が、それを証明している。

怖いのはね、変化そのものじゃなくて、変化を想像している時間。頭のなかで「辞めたらどうなるんだろう」「失敗したらどうしよう」とぐるぐるしているとき、それが一番苦しい。実際に飛び込んでみると、だいたいなんとかなる。

これは気合論として書いているんじゃなくて、勤勉性・誠実性が高い人にとっての統計的な事実として書いてます。資産の下支えがあって、スキルと実績の積み上げがあって、自己規律もある人が、リセットで詰むシナリオってほとんどないですよ。

いじわるな少年
いじわるな少年

50 まで真面目に積んできた奴が、リセットで詰むわけねーんだよなw そこは自分を信じて飛べw

賢い少年
賢い少年

勤勉性・誠実性が高い人ほどリセットを過剰に怖がる傾向があるんだけど、実は一番リセットに向いてる人なんだよね。

ご褒美タイムは、自分の幸福のかたちで設計していい

前編で使った year of hedonism の話に戻ります。

ヘドニズムといっても派手に遊ぶ意味じゃないんです。自分の幸福のかたちに従って生きる年、という意味のヘドニズム。

  • 楽に生きるのが幸福なら、楽に生きる設計を
  • 達成が幸福なら、まだ達成を追える場所を探せばいい
  • 前進感が幸福なら、新しいゲームを始めればいい
  • 難題対処が幸福なら、向き合える難題がある環境を選べばいい
  • 静かに本を読むのが幸福なら、そういう日常を組めばいい

どれを選ぶかは、他人には決められない。本人が棚卸しした結果に従って決める話。

前編で切り分けた お金で解ける層/解けない層 の話を、ここでもう一度。友達はお金で解ける層をすでにクリアしている。50 歳のご褒美タイムは、お金で解ける層をクリアした人間だけが手に入る、動機づけ再設計の贅沢な時間なんですよ。

ツッコミ少年
ツッコミ少年

でもそれ、全員に当てはまる話じゃなくない?

賢い少年
賢い少年

だからこそ前段が大事なんだよね。若いうちに、お金で解ける層はちゃんと解いておく。そうすると、50 歳で解けない層と向き合える贅沢な立場になれるんだよ。

友達への本気の返事

というわけで、前編で約束した本気の返事を、ここに書きます。彼がこれを読むかどうかはわからないけれど、それでいい。


あなたの「FIRE したい」を、ぼくは軽いノリの言葉として受け取らなかった。

20 年来の付き合いだからわかる。あれはあなたの人生の地殻が少し動いた音だった。前の自分と同じ動機で走れなくなってきた、そのサイン。お父様のこともあって、残り時間の感覚も変わっただろうと思う。

だからまず、ぼくが言いたいのはこれ。FIRE するかしないかは、まだ決めなくていい

その前にやってほしいのは、自分に 4 つの質問をすること。20 代、30 代、あなたは何で動いていたか。それは今も同じか。変わったなら、今何に幸福を感じているか。これから何に幸福を感じる自分でいたいか。

これが見えると、道は自然に決まる。完全にFIREするのか、転職して条件を絞るのか、サイドFIRE か、個人事業主になるのか、今の場所に残るのか。手段は、棚卸しの結果から演繹される

それから、これはぜひ覚えておいてほしい。あなたは、勤勉性・誠実性がちゃんと高い人間だ。50 歳まで真面目に働いて、独身一人分の資産をちゃんと築いた。これはビッグ5的に言えば、どこに行っても立ち上がれる性格特性を持っているってこと。

だから怖がらなくても、リセットしたとしてももう一度人生を組み直せる。動機づけの中身を見直して、それに合う場所に動くだけでいい。ぼくがそうだったように、世界は意外と通してくれる。

そしてなにより、人生の後半はご褒美タイムだ。これまで真面目にがんばってきたことへの、自分自身からのご褒美。year of hedonism ってそういうことだと、ぼくは思います。


読んでくれているあなたへも同じことを書いておきます。

もし「FIRE したい」とか「今の仕事を辞めたい」と最近思っているなら、辞める議論を始める前に、自分が何で動いてきた人か、今何で動かされる人か、これから何で動きたい人かの棚卸しを先にやったおうが良い。

棚卸しが済めば道は決まるし、そして――お金で解ける層をちゃんと解いてきた人なら、人生なんとかなります。ほんとに。

現場からは以上です。

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